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物語にテーマを与える②

前回↓

僕は今まで物語をつくる時。面白そうな冒頭やあらすじを思いつたら、とりあえず描き始めていた。

なぜなら中身を濃くしていく方法を知らなかったし。いつまでも考えているよりも、早く思いついたイメージを形にしたかったからだ。

しかしそれだけではテーマが深くなりづらい。

木星探査ロケットを創りたいのに、大気圏を抜けるエンジンを積んで、発射するようなものだ。

次は、木星まで行って帰ってくるエンジンを設計してから、挑みたい。読み手の読解力に頼らず、広く深い共感に辿り着きたい。

そのために大事なのは、主人公に説得力を持たせること。それには“根本思想”が必要だ。

“根本思想”とは何か?

キャラクターの欲求、行動指針となる価値観のことだ。それがあればキャラクターに厚みが出る、実際に存在する一人の人物の様に感じることができる。

それはどこに行けば見つかるのか?

おそらくそれは、作者自身の歴史の中にある。

人生で何か決断する時、そこにはその人の価値観や感情が表れる。例えば大学生の就職活動。「保守的な人」は長く安定しそうな大企業に憧れ、「革新的な人」は可能性に満ちたベンチャー企業に憧れるかもしれない。

保守的な人=「失敗を恐れる臆病な人」とも言えるし、「慎重で信頼できる人」とも言えるし。

革新的な人=「失敗を恐れない勇敢な人」とも言えるし、「無謀で信用できない人」とも言える。

その人が何を大事にして、何を疎かにするか。その行動指針が“根本思想”である。僕の場合はどうだろう。どんな物差しを持って世界を測り、選択してきたのだろうか。

僕は大学生の時、就職活動をしなかった。

正確には途中でやめた。

そして留年をした。

周りの友達はもちろんセッセと就職活動をしていて、最初は僕もその流れに乗っった。訳もわからずマイナビに登録し、スーツを買って、履歴書を書く練習をした。

しかし会社に履歴書を送り一次面接を受ける手前の段階で、不意に何だかやる気が無くなった。そして就職活動をやめることを決意した。

何故なのか?

この辺りに僕の“根本思想”が隠れている様な気がする。

僕は当時美術部で、毎日油絵を描いて過ごしていた。絵の具を重ねるのがとても楽しくて、熱中していた。

美術部の仲間たちと部室で過ごすのも楽しかった。そこには理系の人がたくさんいて、僕は文系だったので彼ら彼女らの考え方がとても新鮮だったし、自分と合っていると思った。

合理的でそれぞれのルールに基づいて動く理系の仲間たち。周りのルールがあっても時には自分自身のルールを優先させる。周りから“変わり者”と思われても関係ない、その行動には信念があるからだ。

僕も文系の仲間内では“変わり者”だった。何人からかは少し下に見られていた節もあったと思う。自分のルールに従っていただけなので気にしない様にしていたが、それでもやはり傷ついていた。理解されないのが悲しかった。

けれど変わり者の集まり「美術部」において、僕は変わり者で無くなった。「木を隠すなら森」である。だから居心地が良かったのだと思う。

けどそれも

長くは続かなかった。

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