ゆめ
目をあけると犬だった。
空を見あげる、雲が流れて、太陽があわく光っている。大地には緑の丘がつづいている。
鼻先を風が通りすぎて、草の匂いと花の香りがする。
おもわず一歩ふみだす。そのまま四足歩行で歩きはじめる。
白い毛並みはところどころ、クリーム色に汚れていて、特に口の両端は茶色くらいに染まっている。
黒い目に黒い鼻、ピンクの耳に舌。
丘をくだってはのぼり、のぼってはくだり。
時には立ちどまり、遠吠えをしてみる。
「オォーン」
ひとつだけ返事がきこえる。
そちらへ向かうと匂いがしてくる、仲間の匂いだ。そこには自分と同じ白い毛並みに四足歩行の獣がひとり。
さらに近づくと、目が合う。尻尾をふって、鼻を擦り付けあって、ひとしきりの挨拶を終える。そしたら今度は二人一緒に駆けていく。
どこまでもどこまでも続く深緑の丘、壊れたストーンヘッジみたいな遺跡を横目に、景色は流れていく。
たまに休憩をして、モグラを食べたり、雨水をのんだり、偶然果実の樹と出会ってはデザートを頬張ったり。
怖いものなど何もない、高台にあがれば景色の先に水平線が見える。
雲と大地の間から、トンビのなく声がする。
その声を合図に2匹は
さらにはしりだす。
競争だ。海へ向かって走っていく。いつまでも、どこまでも続く深緑の丘。走る、走る、走る。景色とだんだん混ざり合って、不思議な感覚、それは全身にひろがっていく。
自らの毛先を超えて、隣を走る獣も超えて、どんどん世界は広がっていく。
もはや境目はない、やがて走っている感覚もなくなって、宙に浮いていることに気づく、ふと下を見ると
そこには幸せそうな白い犬が2匹。
空色の海を眺めながら、緑の丘に4本の足でたっている。風はやさしく、花の香りがする。
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みんなそれぞれ本棚を持っていて、私も私の本棚を持っています。すでに名作や傑作でいっぱいの本棚に「自分の作品を差し込みたい。」それが私の挑戦です。たくさん作品を生み出して、トライしていきます。助力いただけると嬉しいです。